セロ・キシュトワール北東壁 初登

インドヒマラヤ遠征より帰国しました。
目標としていたセロ・キシュトワール(6200m)北東壁の初登に成功することが出来ました。
アタック中の3泊全てを合計しても睡眠時間は9時間。14時間行動後、20時間以上の行動が2回も続いて、耐久力が試される厳しい登攀でした。下降中に降りだした大雪は信じられないことに1.5mも積もり、スノーシャワーと呼ぶには無理のある規模のシャワーを浴び続けながらの下降は心身ともに消耗させられました。
自然。とりわけ本気を出した山に近づくことは恐ろしいことです。その一端に触れながら仲間3人と無事に下山できたことには、最も歓迎するべき事だと思っています。
今回も多くの方々の協力を得て遠征を行うことが出来ました。本当にありがとうございます。
快く送り出してくれた家族と、最高のパートナーそしていつも支えてくれているお客様に大感謝です。

2018年9月20~23日 セロキシュトワール(6200m)北東壁初登 1500m WI5,M6
メンバー:鳴海玄希、山本大貴、佐藤裕介

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2018年9月20~23日 Cerro Kishtwar(6200m)北東壁初登 1500m WI5,M6
メンバー:鳴海玄希、山本大貴、佐藤裕介

平和だった頃のABC

1日目は、傾斜のない雪のガリーと氷雪壁で高度を稼ぎ高度1000mを登ったところでビバーク。

1日目上部氷雪を登る山本

 

1泊目 5700m

天候悪化の兆しがあったので2日目はテントとシュラフを5700m地点に置いて長いサミットデイを狙った。傾斜は一気に高まり難しい氷柱からミックス壁、逆層スラブには張り付く頼りなげな薄氷をたどりながら頂上を目指した。夜間行動を続け22:00、頂上へ到着。すぐさま懸垂下降に移るが闇と霧の為、夜中の2:00に一旦行動を打ち切り、コル状雪面を切り出し座って短時間のビバークとした。

2日目 ランナウトする薄氷を登る佐藤 撮影 山本大貴

頂上へ向かう佐藤 撮影:山本大貴

2泊目はオープンビバーク 撮影:山本大貴

3日目。ビバーク中に降り出した降雪は明け方一旦止んだが、昼から強まり危険なスノーシャワー(後半は雪崩)の中を夜中まで懸垂下降し続けやっと安全な場所でビバーク。

3日目。下降中

4日目。降雪は相変わらず強かったが、安全な尾根上の岩壁帯に下降ラインを取り、氷河へ降り立つ。1~2日の間に氷河上で1.5mもの積雪があり、ABCは完全に埋まってしまった。何本も折れたポールを補修をして一旦落ち着いたが、背後の谷やルンゼからの雪崩の爆風がABCにも到達して危険だった為、夜に再度行動開始。厳冬期の黒部でも経験の無い様な猛烈なラッセルで全く進まず、水平距離200mを進むのに4時間半もかかってしまった。夜中1:30安全そうな岩の陰に到達してテントを設営した。

潰れたテントを掘り出す

危険すぎたABCを夜中に脱出

5日目はやっと晴れるが雪の安定化の為、停滞。
6日目早朝、締まった雪を歩いて容易にBCに帰着した。
アタック中の3泊全てを合計しても睡眠時間は9時間。14時間行動後、20時間以上の行動が2回も続いて、耐久力が試される厳しい登攀であった。そして合計32ピッチの懸垂下降とABCからの夜間避難が最も困難かつ重要な行程となった。

タイム
1日目9/20 5:00出発ABC(4650m)-17:00BP (5700m)-1Pフィックス作業-20:00BP
2日目9/21 4:30出発-22:00山頂-26:00お座りビバーク(6030m)
3日目9/22 4:30出発-24:30(4900m)
4日目9/23 8:00出発-12:30ABC(4650m)=休憩=21:00ABC発-25:30(4600m)
5日目9/24 雪の安定化の為、停滞
6日目9/25 6:00出発-10:30BC(3900m)