レユニオン島

アフリカの東、インド洋に浮かぶレユニオン島は、火山島かつ降雨の多い島で谷が発達しやすくエグレたゴルジュと大滝の聖地のような場所である。フランスの海外県であり、フランス仕込のキャニオニングが盛んに行われている。この地でSAWANOBORIスタイルによる遡行を行った。


○地獄の手前ゴルジュ

タカマカ・マルソワン川(RIVIERE DES MARSOUINS)遡行
7月31~8月1日
前半に訪れたタカマカ・マルソワン川は、この島を代表する大河である。テレビ番組の撮影を兼ねたこの遡行は、山あり谷あり。大人数での遡行と、火山島特有のハング滝や厳しいゴルジュに加え、思った以上の豊富な水量に思い通りに行かない場面もあったが、海からレユニオン最高峰ネージュ山へ突き上げるスケールの大きい山行を完成させることができた。撮影隊のサポートとしての9日間の山行を無事終えて、後半戦へ。

「TROU DE FER」Bras de Cavern川遡行
8月11~14日
後半は、成瀬、田中、佐藤の3人によるトライ。世界を代表する大渓谷の一つと言える素晴らしいゴルジュを持つBras de Caverneへ向かう。地獄の穴という意味を持つ「TROU
DE FER」を目指す旅である。キャニオニングが盛んなレユニオン島には未知の谷はほぼ無いといって良い状態だ。TROU DE FERも未開の谷ではなくキャニオニングやヘリツアーによって一般的に知られる谷である。タカマカの経験から、やっぱりレユニオンの沢は「沢登りスタイルでは厳しいのでは?」「キャニオニングによるトライの方がいいのでは?」と弱点を見出せない火山島の沢に対する不安があった。タカマカと比べ圧倒的に逃げ場が無いTROU
DE FERでは、側壁がエグレ過ぎていて高巻きという選択肢は、無さそうだった。一つの滝が登れなかったら即敗退、その先に待っているTROU DE
FERをこの目で見る事すらできない可能性が高かった。
それでも沢屋としては、その異型のゴルジュに下から沢登りのスタイルで這い上がりたいと思っていた。成功の見込みの少ない難しいトライが予想されたが、僕はできると分かっている事をやりに、レユニオンに来たわけじゃない。

暗く時に絶望的になりそうになった素晴らしいエグレのゴルジュを切り抜けて「地獄の穴」へ抜けることに成功。あの形状のゴルジュをノンボルトで済ませられた事にも満足した。レユニオン東部特有の不安定な天候だったが、要所となるポイントでは、晴天に恵まれた。
遡行して見上げる大空間は格別だ。TROU DE FERは常にそこに存在していてヘリツアーでもキャニオニングでも同じ物を見ているのだけど、先行き不安なゴルジュを流れに逆らい泳ぎ攀じ登って辿り着いた者にしか見えない物がある。

左:地獄の穴へ這い出る核心ピッチ 右:地獄の穴へ流れ込む Bras de Caverne

地獄の穴から高差200mの側壁が円形に取り囲んでいる。直径200mの大クレーターのど真中に見つけた岩屋で一夜を過ごした。2つのハングした滝を登る事は今回のスタイルでは不可能であったので対岸のブッ立ったブッシュラインから稜線目指す。棘ばかり立派なヤシ科のブッシュは折れやすく、傾斜の強い側壁の登攀は危険且つ骨の折れるものであった。結局、壁の中でのビバークを含めた2日間をジャングルブッシュで過ごした。強烈な藪漕ぎ登攀に計24時間を費やし、稜線へ這い上がった。3日間の計画で入山したが1日食い伸ばし4日間で下山する事となった。

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タカマカ http://goo.gl/rXLBOr
TROU DE FER http://goo.gl/rCzAKF