黄金の風

黄金の風(8P/5.10b)

秋一番、核心手前のハング下に入り込むピッチは、オリジナルラインから行くと積み木状態の岩を登ることになり大変危険だ。原田・南裏ルートから行くのが良いだろう。黄金の風は、秋一番、原田南裏ルート、クレセントクラック等を繋いで行くルートで、1~2Pのみがオリジナルとなるルートであるが、そのスクイズチムニーが大迫力でクライマーを圧倒するルートである。全体を通してしっかりしたワイド技術が必要なピッチが多く、ベルジュエールなどより遥かに時間がかかるルートであり内容も濃い。ベルジュエールは最初の1Pが5.11bとグレード的に厳しいフェイスピッチがあるが、そのピッチ以外で比べると黄金の風が難しいしある程度のフェイス能力を備えた現代クライマーにはワイドも厳しい黄金の風の方が手強いかもしれない。全体を通してしっかりしたクライミング能力と持久力を試されるルートである。

1P目(30m 5.9)

山河微笑や翼ルートと同ライン。

2P目(25m 5.10b)

山河微笑のチムニーと別れ右のフェースを登る。秋一番ルートと同様である。5.10代の瑞牆マルチとしては珍しくフェイスの面白いピッチ。バランシーかつムーブも面白い。

3P目(25m 5.9)

ルンゼ内に2つあるワイドの左を登る。最初が見た目より結構悪い。

4P目(30m歩き+15m 5.8)

5P目 30m 5.9

見上げるものを圧倒する立派なスクイズチムニー。意外とプロテクションは奥に取れるのでワイドに自信があれば特別大きなカムは必要ない。登るとドンドン傾斜を感じる素晴らしい内容である

6P目 20m 5.8(初登時は5.9ほど)

スクイズチムニーが終わり平和なテラスから見上げると二つのワイドがある。初登時は左の傾斜のあるチムニーを辿ったが、2021年久しぶりに再登した際は右の容易なラインから登り、そちらのクラックはそれなりに掃除した。

7P目 25m 5.10b

クレセントクラックに続く凹角を登る。見た目は簡単だが、吐き出されそうになり意外と悪い。


8P目 35m 5.10b

ひたすら左上する美しいクレセントクラックは、最後トラバースに近い位のライン取りで左の肩に抜けることが一般的だと思うが、振られるのでフォローも含めて結構危ない。今回はクレセントクラックの最後を途切れがちな細いクラックを使用して直上するラインをした。一段階難しいラインとなり終盤も緊張するが、落ち着いてクライミングできればプロテクションも良好でフォローも含めて危険度は少ない。

9P目。50m。3級ほどの岩稜を辿る。

10P目 20m 5.10a

バランスが悪い数ムーブをこなせば正面壁のピークはすぐそこだ。

瑞牆マルチ 翼ルート 5.10b

梅雨入り前のタイミングで、翼ルートから瑞牆 十一面岩正面壁のピークまで登ってきました。あまり登攀した話を聞かないルートでウェブ上にも古い記録しかない少し謎なルートでしたが、実際は岩の状態も良好で素晴らしい1日になりました。もっと登られるべきルートだと感じます。

翼ルート8/8(日)を新たに設定しました。

翼ルートの初登攀は1979年。左岩壁方面では最も早く登られたルートで当時、十一面岩のルートの中で最も人工登攀が少ないルートでした。今回登攀してみてやはり、岩の弱点を巧みに突いたルートだと感じました。

翼ルート概要

1P目(30m 5.8)
燕ハング左端から始まる凹角が取付き。
ワイドから小ハングをアンダーでトラバースして少し脆いフェイスを進む。
瑞牆トポには5.8となっているが岩が崩れ現在は5.9が妥当か?いずれにしても、このピッチを余裕でこなせないかなら出直した方が良い。

1P目 取り付き

2P目(40m 5.8)
圧倒的な大チムニーをバック&フットで豪快に登り、凹角状にチムニーが狭まった部分からはハンドジャムも使いながらグイグイ進む。最後の屈曲部分が少し悪い。ここまで山河微笑と同様。

4P目(40m 5.8)
テラスからバンドをトラバースして(ロープの流れ的にピッチをここで切った方が快適)
素晴らしく快適なチムニーから綺麗なハンドクラックを登る楽しい1ピッチ。

5P目(40m 5.8)
意外と登りにくい凹角状クラック。しっかり左足のフットジャムを効かせて登りたい。
数メートルの歩きを挟み、短いフレアークラックから左の樹林方面へ。
短いチムニーを登ったら立木でビレイする。

6P目(120m歩き+20m 5.8)
正面壁ピークを目指して樹林を歩き、汚いクラックを右上。

7P目(20m+10m 5.10b)
樹林の中の安定したテラスから、立派なコーナークラックを登る。
少しだけ被っていてるスタート部分を超えると段々クラックは広がり女性はフィストが決まらなくなって5.10aより難しく感じると思われる。※流石に辛いのではという意見が多く5.10bかなと思っています。
大岩でビレイして。最後は回り込んでから数メートルのスラブを登れば正面壁のピークへ到達!帰りは歩きと短い懸垂下降で取り付きに戻ります。

瑞牆 屏風岩クラック・マルチクライミング講習会

秋の気配が漂う瑞牆 不動沢でクラック・マルチ講習会。
岩も良い状態になってきてこれからがベストシーズンですね。
この日は、平日の講習会ということもあり私達だけで貸切状態の
屏風岩でした。

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テーピングの巻き方、基本のハンドジャムから始まり、5.8~5.10aのクラックを中心とした講習でした。
今回、参加されたお二人は
ワイドクラックにも興味があったので「よろめきクラック」でワイド特有の動きを
講習させていただきました。チキンウイングが決まるといかに楽に体を
スタックすることができるのか。体の様々な部分でスタックさせる動きや
足捌きの基本的な動きも一通りこなしました。
クラックは技術系のクライミングです。特にワイドは日常生活やジムでも
全く使わない動きを組み合わせて割れ目を制する深く楽しいクライミングです。

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寒々ルート1P目は、立派な割れ目をレイバック。

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3P目は、結構威圧的なワイドが待っています。

お二人とも、フェースでのクライミング力は高く、ワイドクラック技術の飲み込みも早くて
ちょっとしたアドバイスで登りがスムースになっていき私としても嬉しい限りでした。
後半は、時間的にも余裕があったので
「寒々ルート5.7 3P」にてマルチピッチクライミングを実際に行いました。
3Pと短く入門的なルートです。ほぼ初めてのお客様にもマルチのシステムを理解して頂きながら
変化に富んだクライミングを楽しんで頂きました。

非常に意欲的なお客様によって有意義な講習になりました。ありがとうございます。
講習会の参加に続いて、マルチプランも申し込まれていたお客様。
次は、多くのピッチ数をこなして最高のロケーションの元クライミングを楽しみたいですね。
また、お会いできることを楽しみにしています。

マルチピッチクライミングやアルパインクライミングの実践を見据えての
クラッククライミング講習ですが、クラック初心者でも参加可能です。
興味のある方は、
日程表や、募集プラン要綱をご覧になり、お気軽にお問い合わせ下さい。

瑞牆 十一面岩 奥壁「Joyful moment 」5.9 5P 再整備

瑞牆 十一面岩奥壁ズルムケチムニールートの右にある顕著なクラックラインを再整備しました。
「Joyful moment 」5.9 5Pのトポとルート解説を中心とした紹介です。

奥壁全景 小ヤスリ岩から

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瑞牆山 マルチピッチ クライミングガイド 継続編 調和の幻想~左岩壁~奥壁~小ヤスリ岩

お天気の良い平日。静かな瑞牆山で、熱く燃えるお客様と共にマルチピッチクライミングを行いました。
この夏に予定されている「滝谷出合~4尾根ガイド」の予行山行も兼ねてのガイディングです。
お客様のご依頼は、「ヘトヘトになるまでの継続登攀」
北アルプス等の山岳地帯のクライミングで本当の限界まで出し切ってしまったら
遭難してしまいますが、山岳地帯と比べるとアプローチが近く、
外的な危険の少ない瑞牆等で自分の限界付近まで登りこんでみるというのも貴重な経験になります。
もちろん、トレーニングとしても最適かと。

末端壁「調和の幻想 5.10a 5P」からスタート。
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瑞牆山 マルチピッチクライミング開拓プラン 調和の幻想~奥壁~小ヤスリ岩

かなり特殊なご依頼を頂きました。ご依頼内容は、瑞牆でのマルチピッチ開拓プランです。グランドアップによる4~5ピッチほどの開拓クライミングをご希望でした。(当然ながら)お客様がリードしてバリバリと開拓するわけではなく、主に私がリード・開拓するスタイルや様子を見てみたいとのことでした。トポの無い冒険的なクライミングをしてみたいとも。
瑞牆で4~5Pのマルチとなるとカンマンボロン~十一面岩周辺に落ち着きます。この周辺で、はたして未踏のおいしいラインはあるのか。偵察を重ね、この地に精通する開拓クライマーにもご相談しながら目的のラインを定めてガイド当日を迎えました。目指すラインは奥壁のズルムケチムニーの右にある顕著なクラックライン。

奥壁 ライン1

奥壁全景 小ヤスリ岩ピークより

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