インディアンクリーク

2013アメリカ クライミングツアー その1
シャットダウンによる国立公園の閉鎖。今回のツアーの目的としていたヨセミテもその例外ではなかった。楽観的な私は、実際は登れるに決まってると言い聞かせ出発前夜のパッキング作業を続けたが、日本出国日の早朝、先発してヨセミテに滞在していたジャンボより「俺らも明日の15時にはヨセミテを出なければならない。」というメールを受け取り、現実を突きつけられた。しかし、休暇も無理して確保しチケットも今更変更など無理である。とりあえず出発して「できることをする」と決めた。ユタ等他の州への移動も充分に考えられる状況になったので大急ぎで国際免許証を取得し、荷物をダッフルバックに強引に詰め込んで、バタバタしながら出発。
○ドライブ写真
ロス空港からレンタカーで集合場所と決めたレイクタホまで移動1200km。ヤケに風が強く寒い。こちらもシャットダウンの影響でキャンプ場は閉鎖され居心地のよいベースは得られそうも無いので、一つも登らずに、ユタのインディアンクリークへ移動。移動ばかりの2日間、2000kmを経て夜中の2時、キャンプ場に到着した。

○インディアンクリーク遠景写真

インディアンクリーク
「岩と雪」152号は、インディアンクリーク特集だった。赤茶けた砂漠に真っ赤な砂岩。一直線に走った無数のクラックと戯れる日々。雑誌の中では、お伽噺のような世界が広がっていた。「いいな~スゲーなあ。行ってみてえ!」と思いながらベットの中で何度もその記事を読んだ。かれこれ15年ほど前のことだ。ヨセミテ行きが無理となり、廻り回ってユタ州の砂漠インディアンクリークに辿り着いた僕は、あのお伽噺の世界・クラック天国にいつの間にか踏み込んでいたのだった。キャンプ場からも、道路からも数え切れない赤茶けた岩とクラックがそこら中に溢れているのを見て、2000kmドライブが報われたと思った。
登りまくりのアメリカツアーが始まった。2日登って1日レストの繰り返しで毎回違う岩場でオンサイトトライ中心にジャミングし放題。早くも2日目で指皮がベロンチョして手は血だらけになってしまった。テーピングが日に日に増えていき傷のケアが日課である。ちょっと遠目に見える岩場は未開拓エリア。ここにはアプローチ30分以内で幾らでも課題があるため、少しでも遠いと全然開拓されて無いという贅沢な現象がおきているのだ。

以下、日記風にエリア・ルートの簡単な説明。

●Battle of the Bulge Buttress
アメリカツアー初日。移動疲れもありましたが出だしとしては上々。どれもこれも、美しくカッコいい。こんなクラックを登れて幸せ。Swedin-Ringle
5.12-のオンサイトは集中して良い結果が出せた。
・The Mayes 5.10+ OS アップに良い素直なルート。
・Cal and Andy’s Route 5.10 OS中々、変化に富んでいてオモシロイ。
・Quarter of a Man 5.11+OS格調高い五つ星ルート。
・Battle of the Bulge 5.11 OSエリア名でもある、インディアンクリークらしいスッパリ割れたクラック。
・Swedin-Ringle 5.12- OS 終了点クリップが、微妙。延長バージョンAir Swedin5.13-R は、とてもカッコ良くトライしてみたいルートのひとつ。

●Way Rambo
今日は日曜日。ちょっとマイナーなWay Ramboへ。
ここも、素晴らしいルートがひしめいているが、日向はかなり暑くて辛いことに今更ながら気付く。シンハンドの渋い課題Slice and Dice 5.12では、リンクロック(サムロック)がとても有効。OSはできず、2回目で指皮ベロンチョしながらなんとかRP。看板ルートWay
Rambo5.12-を登って最後は、5.11-のワイドでしっかり締めて一日を終える。
・Blue Sun 5.10- OSチョー快適ハンド。
・Layaway Plan 5.11d FL 赤キャメサイズのコーナーをグイグイ登ってハングをレイバックで一気にかわす。長い。
・Slice and Dice 5.12 RP2 リングロックとシンハンドの組合せ。足の重要性を再認識。素晴らしい。
・Way Rambo 5.12-FL フェースチックで動きのあるここでは珍しいタイプ。最終便近くでギリギリだったが5.12台としては登り安く感じる。
・Serrator Crack 5.11- ワイド。でだしの小ハング前後がポイント。リービテーションと足の使い方がポイント。最後はワイドが広くなって露出感のあるランナウトと続いていく中々良くできたルート。

●Cliffs of Insanity
ダートが荒れていてアプローチがかなり長かった。岩場にショートカットせず、林道を奥まで詰めてトレイルから上がるのが正解。エリアが広すぎて一通り見るだけで1時間かかってしまう広大なエリア。
5.11台までのクラックでアップしPuzzle Factory 5.12へ。会心の登りでOS。シンハンドと中間部のフェース、後半はレイバックと盛りだくさんの内容だった。最後に取り付いたFunny
Farm 5.12-は、登られてなく砂々だったが、粘って掃除しながらオンサイト。あの状態で諦めずに登れたことに満足。Broken Brain
5.12b/cは、今回取り付けなかったが、素晴らしい迫力で見上げるクライマーを圧倒する。次は是非トライしよう。

・Unamed 5.10+,5.11?5.10 OS
・Funny Farm 5.12- OS 変化に富んで駆け引きも楽しいルート
・Puzzle Factory 5.12 OS 内容は悪くないのだが登られておらず砂々。

●Fin Wall
この日の目標はBrother from Another Planet 5.12-。ルーフワイドの5.12。ロストアローのカタログに写る今井考さんの登攀シーンが印象的です。日本では、できないタイプのクライミング。
OSトライは中々良い所まで行ったもののフォール。異次元ムーブに酔いしれました。夕暮れ時ヘッドライトを灯しての2トライ目でギリギリ完登!刺激的な1日であった。

・Brother from Another Planet 5.12- 上記のとおり。
・5.10Rのワイド 落ちない自信がないと危ない。
・5.9

●Second Meat Wallその1
平均して30m程の長さを持つインディアンクリークのクラック登りでは中々本数を稼ぐことができない。今日もたった五本だけど、5.12台3本のオンサイトは良い成果だった。特にFamily
Home Night 5.12では、駆け引きのあるシンクラックを中間部として上下ともに登り応えのある好ルートだった。

Tofu Crack 5.10 素直なアップルート。
Top Sirloin 5.11 赤キャメサイズが続く得意サイズ。リズム良く登るのがコツ。
Extra Lean 5.12- 短くフェースチックな異色のルート、デットしたりカチを握ったり。見た目は冴えないけど、楽しい。
T-Bones Tonight 5.12- 迫力あるシンハンドコーナー。ハング越えは豪快にレイバック。
Family Home Night 5.12変化あるシンハンドクラック。最後の最後でパンプが絶頂に。

●Second Meat Wall その2
トポの写真で圧倒的存在だったCarnivore「肉食獣」5.12-にトライ。ワイドの5.12-で足先行ムーブの写真が印象的。2P目となることもあって、面倒臭く敬遠されまくってるルートだけど、折角なので取り付いてみる。ハングまでは簡単なアプローチ的10mを登りいざハング越え。行きつ戻りつムーブを繰り返したが足を真上にした状態で無念のフォール。怖い。。。何度もロープにぶら下がりながらムーブを練り、ハング越えムーブ完成!やったぜと思ったら、そこから95度に緩く被った5番サイズがやたらと難しく。断念。恥ずかしながらエイドで抜ける有様。こんなこと、何時以来だろう。。。2時間くらいトライしてたらしく全身ボロボロ。完全にノックアウト。以後、ビレイヤーに徹することに。が、気合入れて登っているクライマーを見ている内に復活し、End
of Line5.12にトライ。全長54m。ギアは#0.75、12個、#0.5、8個!苦しいサイズが20個も必要です(普通こんなにギア集まんないよ。。。)コーナーに走るどこまでも続いていくようなクラックは美しく圧倒的だが、壮絶な苦しさが簡単に想像されて取り付き難いルートだった。オンサイトトライは最後10mでフォール。案の定トライされておらず砂々のクラックだったが、全力を尽くせたので悔いは無し。既に、完全なボロ雑巾状態だったが明日はレスト日だからと日が沈みかけた頃、ラストトライ。途中からはヘッドライトを付けながら吼えながら突き進む。終了点が真横に見えた所まで頑張ったけど、フォール!力及ばず。。。成果の上がった昨日とは一転。何をやっても完登できなかたけど力を尽くした1日だったし、色々と学ぶ所の多い1日であった。

翌日のレスト日。図書館でネットしているとユタ州独自の予算でザイオン国立公園を開放し出したことが判明。しかも1週間限定。元々、僕らはエルキャプのマルチ目指してトレーニングを重ねアメリカに来ました。「ここのクラックも最高だけどやっぱりマルチピッチクライミングがしたい!」と言う訳で、マルチの岩場として大人気のザイオン目指して早速移動となりました。

つづく(ザイオンでのクライミング記はこちら